Pass the Baton! 020は東京より
矢幅歩さんのインタビューをお届けいたします!
プロフィール
矢幅歩 Ayumu Yahaba
矢幅歩 / Ayumu Yahaba
1979 年 4 月 24 日生まれ。ジャズヴォーカリストの母親とフルート奏者の父親の 元、様々な音楽を聴いて育つ。高校時代にアメリカへ交換留学、大学時代にスペ インへ短期留学するなど、主に語学に意欲的に取り組む。
上智大学に入学後、ジャズのセッションへ飛び入りしたことをきっかけにジャ ズ を原点としたソロ活動を開始。
ソロ以外の主な活動では’ 06 年にジャズヴォーカリスト Geila Zilkha(ギラ・ジルカ) とツインヴォーカル・ユニット「SOLO-DUO」を結成。’ 10年にブラックルーツ系 のバンド「ASΦKO」を結成。’ 16年に4人編成のアカペラグループ「鱧人」を結 成。 近年のスタジオワークとしては、映画 機動戦士ガンダム「サンダーボルト」や、 映画 ドラゴンボール超「ブロリー」のテーマソングに参加。
ディスコグラフィ
※以下は画像をクリックしていただくとAmazon.co.jpストアをご覧いただけます
SOLO-DUO/TWELVE LETTERS
鱧人-HamojiN- 「WijiN 〜其の壱〜」
SOLO-DUO Geila Zilkha & Ayumu Yahaba「Morning Light」
breathing…
Overture~Ayumu sings 80’s Women Songs
矢幅歩 インタビュー
-
ジャズを歌い始めたきっかけは何ですか?
母がジャズヴォーカリストだったことが一番大きなきっかけでした。
幼少の 頃から母が歌うのを何となく聴いていて自然に覚えてきた曲が多かったのが原 点的なきっかけだったと思います。
僕が高校を卒業したての頃に、両親が大学 時代に所属していたジャズサークルのOB会に連れて行かれたのですが、そこで 僕も飛び入りして1曲歌ったのです。ピアノは大徳俊之さんでした。
全身に電 気が流れるような感動があったのを覚えています。 同時期に、ジャズミュージシャンと知り合うきっかけもあり、オリジナル楽曲 の制作も始めました。
きっかけはジャズであり、ジャズが繋げてきたご縁ばか りなのですが、自分から聴いてきたのはR&Bでしたし、制作に心がけてきた フィールドは割とソウルだったりポップスだったので、実は自分がジャズシンガーだという自覚はあまりありません。
ただ、オリジナル曲もアレンジのアプローチはジャズを意識しているものが多いです。
-
ジャズを歌うことのどんなところが好きですか?
共演者やオーディエンスとも影響し合って、歌や演奏が変化していくところ、 毎回違う景色の曲になるところです。
ポップスには決めた景色を求めるプロセ スの美しさがありますが、ジャズにはその時だけの表現や二度と再現出来ない 刹那的な美しさがあります。
僕は音楽の勉強を一切しないままに歌手になりました。元々は就職するつもりで 大学にも通ってましたから。アカデミックな素養が全くありませんのでアドリブ という点においても不器用です。それでも音楽的に自由になれる、自分次第で自分 の居場所を作れるのがジャズの醍醐味だと思います。
例えば落ち込んでいるいる時、 コンディションの良い時悪い時、いつだってその時にしか出せない声や表現があ るというように全て肯定するところから始まるのがジャズの許容する器の大きさ だと思います。即ち、それは人の生活、会話、人生そのものだと思います。
-
健康管理のために日頃、どのようなことに気をつけていますか
喉の状態の良さと睡眠時間は比例するので、本番前はとにかく睡眠をとるよ うに気をつけています。
良く寝る人を怠け者だと捉える人がたまにいますが、 とんでもないです。寝るのも仕事です。必死で寝ています。(笑)
-
普段ソリストとして全く異なる活躍をなさっている日本のジャズ界を牽引する るソロヴォーカリスト3人(矢幅歩、伊藤大輔、KOTETSU)とジャズ・ヴォイス パーカッショニスト(北村 嘉一郎)、男性4人によるアカペラ・コーラスユニッ ト”鱧人”は矢幅さんのお声掛けで立ち上げられたと伺いました。
どのような想いがあったのか、これからの鱧人さんの抱負など、お聞かせいた だけますか?
どのような想いだったか、、、一言で言うなら、一緒にお酒を飲みたいという 純粋な想いでした。
遡ると、5年位前にそれぞれ僕のライヴにゲストとして呼んだことがありました。 既にKAIさんとは、僕のソロライヴやギラ・ジルカとのユニットSOLO-DUOのゲ スト共演者として太く長い付き合いになっていましたが、KOTETSUと大輔には興 味がありましたし接点もありましたけど歌手同士なので出会うことは殆どありま せんでした。
ということで、ある時自分の好きな歌手をたくさん呼ぶという僕の 企画のライヴにゲストで呼んだのです。二人とも名人芸を持ってるレベルの素晴ら しい歌手ですが、自分とは異なるタイプなのでコラボしたら楽しいはずだと思い ました。
そのライヴ「Ayumu & Friends 2」のメンバーは、KOTETSU、伊藤大輔、 ギラ・ジルカ、MAREE ARAKY、竹中俊二(Gt)。 あまりにも楽しかったので、別日に改めて打ち上げをしたのですが、スケジュール が合ったのがKOTETSUと大輔だけでした。
歌手同士、男同士、蓋を開けてみれば 積もる話があったので色々な想いを吐き出し、傷を舐め合いました(笑)。
でも なぜか学生時代の友達と飲んでるような気分で、くだらない話ばかりに花が咲き、 お酒が進みあっという間に記憶が無くなってしまいました。朝方起きて見渡すと 三人とも倒れていて、KOTETSUに関しては想い以上のものも吐き出していまし た。
あっという間に終わってしまい名残惜しかったので、その後も打ち上げを重ねて いきましたが、終電を気にせずにもっと本気でお酒を愉しむために、二泊で万座 温泉でライヴをすることに。
ただ、万座温泉は群馬の山頂ですし冬場は当然雪道 です。頼れる運転手で、お酒が好きで、アカペラで共演出来る人が好ましいと考え るとKAIさん以外に思いつかなかったのです。アカペラは最もシビアで過酷な世界だと理解していましたが、行きの車の中で1曲リハーサルしただけだったので、今 思うと良くあんな無謀なことをしたなと感心しますね(笑)。
でも、それぞれの 歌唱力とバランス感覚とアドリブ力に頼りきった、開き直ったとても良いライヴ でした。
それと同時に、他にはない秘めた可能性に気づきました。皆個性も即興 力も高いのは知っていたんですが、それ以上に声の重なった時のハーモニーの響 き、ニュアンスの合わせ方にビビッときたのでした。そしてその感動をオーディエ ンスも共有していたのも印象的でした。
ライヴを終えて無事に打ち上がり、露店風呂でKOTETSUがぽろっと口にしたのが 鱧人という言葉でした。ハモる人という意味から派生しましたが、魚であること、 日本人らしく漢字というところ、そして語感が気に入りました。
その数日後、タレントのラブリさんのサプライズバースデーパーティでの演奏を相 談されたので鱧人で臨むことになり、音響を探した時にご縁が繋がったのが音響 会社オアシスさんの代表、金森さんでした。オアシスを鱧人の第五のメンバーとし て味方につけられたのは、鱧人にとって一番の飛躍だったと思います。
万座温泉での初共演から三年経ちました。全国ツアー、香港ツアー、韓国ツアー、 色々な場所で演奏のご縁に恵まれてきましたが、どの会場でもその時の最大限の 力を出し切ってきた自負が皆にはあります。変わらぬ想いでちゃんと打ち上げが出 来てきたのがチームにとっての活力の基盤になっていると思います。
今後の具体的な抱負としては、ジャズフェスに参加したいですね。海外公演なども 目標にしていますし、そのためにも2枚目のアルバムCDを制作中です。運営には経 費がかなりかかるので、制作の継続力を養うためにも、更なるグッズの充実や映像 の充実も必要だと考えています。
ただ大きく抱負を考えると、鱧人は僕にとっては 一時的ではないライフワークとしてのイメージに原点があるので、おじいちゃんに なってもやってられるバンドであれば良いなと思っています。鱧人は仕事である以 前に趣味なのだと思います。
-
過去の作品のタイトルやコンテンツについて
僕の所属するユニットは5つほどあるのですが、その1つ、ギラ・ジルカと のツインヴォーカルユニットSOLO-DUOの新作「Twelve Letters」の紹介をした いです。
-
創ることになったきっかけは?
SOLO-DUOの1枚目のCD発売から今年でちょうど10年ということで、1 0周年記念にバンドで、ヴァイオリン、サックス、パーカッションなど豪華ゲ ストもお迎えして大作にしたいという思いがきっかけでした。
-
コンセプトは?
ギラと僕それぞれに思い入れのある愛の物語12曲を12通の手紙としてア レンジするコンセプトでした。
今まではデュエットの醍醐味でもある男女二人 の愛の会話形式のラヴソングが多かったのですが、今作では基本的にそれぞれ がソロだったりハモッタリしながらも、常に第三者へメッセージや想いを歌っ ているスタイルで歌っています。
中にはもちろんラヴソングもありますが、子 から親に送るメッセージ、親から子へ送るメッセージが多かった気がします。
代表的なのは、今回唯一のオリジナルソング「Answer is you」です。作詞をし たギラにとっては親友に送ったメッセージだったそうですが。
-
選曲やそれにまつわるエピソードなど、教えてください。
今回TOTOの「ROSANNA」をカヴァーしているのですが、TOTOのレギュラーメンバーであるパーカッショニストのレニー・カストロさんをお誘いして、 ROSANNAを含め3曲参加して頂いたのは今作の特別な面白みの一つだったと 思います。
想像以上に素晴らしい形でフィーチャーして貰えました。 他では、「屋根の上のヴァイオリン弾き」のテーマソング「Sunrise Sunset」に ヴァイオリンの中西俊博さんがソロを弾き終えた後にスタジオ内で拍手が起こっ たのはとても印象的でした。
素晴らしすぎて泣きそうになりました。 サックスのかわ島崇文さんにも2曲参加して貰えました。「ラヴストーリーは 突然に」のソロが本人的になかなか成功しなくて、失敗するたびに絶叫してい たのは忘れられません。
皆さんの美味しいところをちゃんとフィーチャー出来たのは今作の成功のポイ ントだったと思います。
-
メンバーのみなさんのご紹介をお願いします。
SOLO-DUO new album「Twelve Letters」
ギラ・ジルカ & 矢幅歩(Vo)
竹中俊二(Gt)
秋田慎治(Pf, Keys)
楠井五月(B)
加納樹麻(Drs)
中西俊博(violin)
かわ島崇文(A.Sax, T.Sax)
Lenny Castro (Percussion)
-
アートワークについても教えてください。
ジャケット用の撮影現場で、ギラのインスピレーションをきっかけに背景用 の絵のペインティングや、自分達の手にペインティングをしたのはクリエイティ ヴで楽しかったです。スタッフには迷惑をおかけしました。(笑)
-
その他楽しいレコーディング秘話があれば教えてください。
これも撮影での話なのですが、ひとしきり撮るべきカットを撮り終えた時、 二人の気が緩んでふざけたポーズをとったところをカメラマンがすかさず撮っ たテイクがありました。
色々な候補がある中で、結局そのテイクがインパクト があるということでジャケットに使われることになりました。
偶然撮れたもの とはいえ、全て準備した上で撮れたテイクだったと思うので、やっぱりレコー デイングと同じで、フォトセッションも本当に奥深くて楽しいです。
カメラマ ン鈴木敏也さんを筆頭に、メイクさんやアシスタント、スタジオスタッフ、皆 さんとのチームワークがあったからこそだと思っています。
-
最後に、ジャズファンのみなさん、他のシンガー・ボーカリストのみなさん、またはJVAJの活動へのメッセージをお願いします。
お手本になるようなミュージシャン、歌手、素晴らしい方々がたくさんいます し、学ぶべきことは永遠にあると思います。
同時に、人と同じではないからこそ自 分という存在を許容してくれている音楽という世界です。音楽には何度も救われて きました。
僕はこの恩返しを一生かけてしていきたいと思います。 普段音楽活動をしているだけでは知って貰えないことを引き出してくれるインタビ ューだと思いました。
貴重な機会に感謝しています。