Pass the Baton!【006】エリカ (ERIKA MATSUO)

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Pass the Baton! 006はニューヨークより
エリカさんのインタビューをお届けいたします!

プロフィール

ERIKA
a.k.a/ERIKA MATSUO

Erika Matsuo

Erika

NY在住ジャズボーカリスト。

福岡生まれ。幼少よりクラシックピアノを学ぶ。高校時代、女性5人組のロックバンドでヤマハのTeen’s Music Festivalに出演しオリジナル曲を演奏して九州大会優勝。

1997年に長崎で平戸祐介と出会い、 東京行きを変更しNYへ渡米。平戸のバンドでNYミュージシャンとレコーディングをする。日本に一時帰国する。

2000年に再渡米しニューヨーク市立大学のJAZZプロフェッ ショナル科で シーラ・ジョーダンに師事。 ハーレムの教会で仕事で10年聖歌隊で歌う。

2003年 ニューヨーク市立大学JAZZプロフェッショナル科卒業。優秀な学生に贈られるMusic Awardを受賞。

2007年3月 浅草ジャズコンテスト、ジャズボーカル部門でグランプリを受賞。
2007年7月 爽健美茶のCMソングを歌う。
2007年 セルフプロデュースアルバム、”I Close My Eyes”をリリース。

2009年 セカンドアルバム”OBSESSION”をリリース。

2012年3月ロングアイランドのジャズフェスにてMONDAY 満ちるのライブにゲスト出演。

2013年 サードアルバム”TRUE COLORS”をリリース。

ギル・ゴールドシタイン、ドクター・ ロニースミス、ホメロ・ ルバンボ等世界トップミュージシャン17名とレコーディング。

“TRUE COLORS”は、JazzPage.Netで2013年度ベストジャズボーカルアルバムで3位、ジャズマンオブザイヤーでは小曽根真に続く2位、ベストジャズボー カリスト部門では6位を獲得。

2015年秋にツアー10周年記念し、アメリカで有名なクラウド ファンディング”PLEDGE MUSIC”にて124%達成させ、3枚目のアルバム”Nostalgia”をリリース同年9月,10月JAPANツアーを行った後、11月末に Blue Note New YorkでCD発売記念LIVEを大盛況に終える。

2016年1月、”Jazz at Kitano”にてコンサートを行う(Jazz at Kitanoでは通算8度目のコンサート)。

モデル・タレントのローラのNYレコーディングに参加(2015年8月)、有吉弘行のウーマン・オンザ・プラネット( 2014年3月)4週連続ゲスト出演など、バラエティー番組でも幅広く活躍する。

 

ディスコグラフィ

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Obsession / Erika (2009)
Obsession

True Colors / Erika
Disc Union (2013)
True Colors

 

Nostalgia  / Erika
DiskUnion (2015)
ノスタルジア

 

インタビュー

 

  • ジャズを歌い始めたきっかけは?

 

歌手のMONDAY 満ちるさんの音楽性に感銘を受けてジャズに興味を持ち始めたのがきっかけです。

ジャズを学べば、色々な音楽の深い部分が見えてくるとのアドバイスを頂き、ニューヨークシティーカレッジに入学し、ジャズを歌い始めました。

 

  • これまでの活動で苦労したことやその解決策を教えてください。

 

2000 年に渡米した頃はまだインターネットも普及していなかったので、大学の資料を集めたり、オーディション日程を調べるのも一苦労でした。当時はスカイプなど のオンライン電話が出来る手段が普及していなかったので、公衆電話からジャズ科学があるか否かを大学に問い合わせをするだけで、通話料が2万になったり。 結局情報がなかなか得られず、NYに着いた時には大学のジャズミュージシャン・プロコースのオーディションは終わっていました。しかし、まだ自分が習得し ていた曲のレパートリーが少ない状態だったので、今思えばオーディションが終わっていた事で、レパートリーを増やしたり、プロジャズ科の準備、半年マネス大学でクラシック理論を学べたので、良かったです。

大学に入学したときは、授業についていくのが必死でした。ただ、耳はクラシックピアノを5歳から習っていて、当時は絶対音感があったので、それがとても助け になりました。当時は毎晩ハーレムなどで行われているジャムセッションをはしごして、朝4時に帰り、3時間眠て、大学の必須英語クラスに通 う日々でした。あの頃は、恐れもなかったため、ビンセント・ハーリングがホストをし、ロバート・グラスパー、ヘレン・サング、リッチーグッズ、アンソニー ウォンジー等の素晴らしいミュージシャンが集まるジャムで何曲も歌わせてもらい、演奏する事で勉強させてもらいました。

2005 年からNYを拠点に日本のツアーを始めました。当初は日本でジャズシンガーとしての実績も無く、名前を聞いたことがない、集客はどうなるのか?と、ライブ をするまで受け入れて頂くのが大変でした。一度ライブをさせて頂くと、暖かく受け入れて頂き、ご縁、繋がりも増え、たくさんの素晴らしい方々に出会い、支 えて頂き本当に感謝しています。

アメリカNYでは素晴らしいミュージシャンが沢山いる中で、人気ジャズクラブで演奏したり、歌で仕事をしていくのも大変な中、日本での最初の受け入れも厳しかったり、どちらにも属せないような孤独感がありました。

でも、NYに拠点に活動すると決めた以上、一流の一線で活動する緊張感を感じながら、インスパイヤーされ、そして、人生、体験し感じる事を表現して、今は自分らしい音楽活動をして行こうと、日々NYにいる意味を常に自分自身に問いながら活動しています。

こ の10年間、オリジナル曲、スタンダード、ブラジルのMPB(ブラジルのポピュラー音楽)を演奏してきて、沢山の方々にサポートして頂きま した。その中でもいい時もあれば、人間関係がこじれたりする事もあり、ツアーも大変で、精神、身体とすり切れていく中で、歌うことを続けていくのに深刻に 思い悩むことが多々ありました。音楽性、人生も変わっていく中で、浮き沈みありながらも、自分の信念を貫き、突き進んで行こうと思 いました。私の師匠が仰った言葉があります。”中傷されたり、色々な理由で沢山のジャズシンガーが歌う事を諦めてしまった。でも諦めてしまったら終わり。 続けて行く事 は簡単な事ではないけれど、続けて行く事が大事だと。”

 

  • どのようにジャズを歌う勉強を重ねてきましたか?

 

とにかく、沢山のミュージシャンとセッションを重ね、学んできました。

ア メリカでは、ジャズスタンダードを歌うというのがジャズというのではなく、歌のフレ−ズ、いかにSWING(どんな音楽でもグルーヴするかどうか)スペー ス、そして 何より人生観、生き様、すべてがジャズの要素を作りあげます。ジャズをベースにして、オリジナルをアメリカニューヨークでは演奏します。

その中で、歌のフレーズ、そして正しい発声、クリアな発音によって作り出されるグルーヴ(SWING感を出すには)はとても大切な事だと思います。そして、リズム、T、D等の音をきちんとクリアに発音する事により、グルーヴさせる事にも気をつけています。

ジャ ズボーカルのレッスン、ヴォイストレーニングのレッスン、ピアノ、理論、発音矯正(英語、ポルトガル語)を大学から勉強しています。歴史はとても重要で、 ジャズヒストリーを大学で、そしてNYの年配の地元ミュージシャンの方々に教科書に載っていないジャズヒストリーを教えて頂きました。

大学でも沢山の勉強をしましたが、いかに場数、経験を積むかが大事で、大学卒業してからが、本当の意味での修行でした。経験を積むために、ミュージシャンとデモ作り、色々な店にアプローチして、ニューヨークの沢山のカフェ、レストランで歌いました。いかにざわついたスペースで、お客さんの意識を引き寄せるか、体で学ばされました。

ハー レムにある教会で10年間、聖歌隊で歌わせて頂いた事がとても勉強になりました。アメリカは宗教観も強く、アメリカの多くのシンガーの方は、自分の身体を 一つの物体と し、見えない偉大なパワー(神だったり、エネルギーだったり人によって違いますが)が自分の頭から身体に伝わって、魂に共鳴し、声、音が出ているという意 識が強 いです。

も ちろんそのエネルギーを伝える過程で、身体が楽器なので、何の害もなくスムーズに意識を集中出来てMessageを伝えられるようにボイストレーニングや テクニック経験を実につけますが、自分の体をあくまで一物体ととらえ、私の身体を使って下さいと、神様だったり、上からのエネルギーに対し、意識を集中さ せて、デディケートして歌わせて頂いているというミッションのような意識が強い事に驚き、感動しました。

教会で歌って育ったボーカリストが多いアメリカで、歌う事においての無にする精神のもって生き方を教会で学びました。

教会でソロを歌わせて頂いた時、アジア人のあなたに黒人霊歌の意味、私たちの気持ちの何が分かるの?と いう冷たい空気が漂いますが、生きる事が大変だった頃に置き換えて、自分の人生を歌うと、ハーレムでの教会の人達は、あなたは自分の歌を歌ったねと受け 入れて下さりました。いかに魂、身体をデディケート(捧げる)して裸になり歌えるかというところで、歌った後は、涙が止まりませんでした。常に音楽が自分 より先にきます。精神と魂のもっていき方を、教会で歌う事で学ばせて頂ました。

うまく歌えるかではなく、自意識、エゴを取り除き、いかにステージ場で裸になれるかだと思います。

心をオープンにして頭をフリーにさせ歌えるか。そこに人は共鳴し、その人の人生に、人に、心から触れたくなるんではないかと思います。人生と連結したリアル な音を出せるように、日々気をつけてることは、頭よりもハートで感じて直感を大事にして生きる、とくにボーカリスト身体が楽器なので毎日の生き様が音に一 番でやすいので、日々ミュージシャンとして人として成長できるように心がけています。

ジャズは語り、英語の発音はとても大事です、言葉、フレーズに想いを込めないと、それはただの無機質な音になってしまいますので、とにかくラップのように毎回歌詞を読み、感情とフレーズを一体化させて、文章をよく理解したうえで、きるべきところでフレーズをきるようにしています。

ジャズボーカルの最初の師匠シーラジョーダンにも学生時代は、練習が足りないとよく怒られました。そのときに、シーラは『私は、ジャズに人生をかけてきた、何よりも一番音楽を優先させた』『命をかけて音楽にデディケート(身を捧げる)と、いつか音楽が命を救ってくれる時がくる』『Don’t be a diva Be a messenger』ディーバにはなるな、メッセーンジャーになれと。

あくまで音楽が大事です。自分のエゴを取り除き、心をフリーにして、人生と照らし合わせ、リアルに歌詞、メッセージを伝えていく。日々心がけています。

 

  • ジャズを歌うことのどんなところが好きですか?

 

人生はジャズと同様即興、いかにその場でどう料理できるか。

ミュージシャンとのケミストリーが絡み合い、その瞬間だけのものをクリエートする。

その時、その瞬間に生まれる音、その空間が、その瞬間のものでしかないのが、儚くリアルで、そういうところが好きです。

 

  • 自分の歌の良さはどんなところだと思いますか?

 

日々自信が無かったり、すぐ心が不安定になりがちですが、明るいとこも暗い自分も含めて、日々の人生の色を歌詞にてらしあわせて、リアルにストレートに歌うところです。

 

  • 健康管理のために日頃、どのようなことに気をつけていますか?

 

身体を柔らかくするために、ホットヨガ、ヨガ、マッサージに定期的にいくように心がけています。

NYでも日々自宅では、有機栽培のものにこだわり、日本食となるべく添加物があるものを取らないようにしています。

そして睡眠を沢山とるように気をつけています。

 

  • もっとも尊敬するアーティストは?

 

ビル・エバンス、リー・モーガン、マイルス・デイビス、チェット・ベーカー、エリス・レジーナ、シャーリー・ホーン、スタン・ゲッツ、イバン・リンス、ミルトン・ナシメント、 エラ・フィッチェラルド、Djavan、 カーメンマクレイ、Monday Michiru、Stevie Wonder、マリアシュナイダー、マイクスターン、 Michel Legrand、Sheila Jordan.

その他多数。

 

 

  • あなたにとってジャズとは?

 

人生そのもの、生き方。

 

 

  • これまでの作品について教えて下さい。

 

1枚目のObsessionは人生でアーティストとして最初の挫折で自信を失い、真っ暗な時代に作って、光を求めて地面を這いつくばるような時期に作ったアルバムで、3枚の中でも思い出深く、光と陰が最も表現されている作品だと思います。

 

  • 創ることになったきっかけは?

自分がこの世にいなくなっても作品は残るというのが素敵だと想い、生きた証を残したいと思いました。

毎回、プロデュースも自分でしているので、ゼロから作品をイメージさせて、自由に作る過程オリジナル曲が大好きなNYのミュージシャン達とのコラボレーションでまた新しいサウンドになる喜びを味わうと、次の作品をまた創りたくなります。

  • コンセプトは?

1枚目Obsessionは光と影。

2枚目は、True Colorsはシンディーローパーが歌っている曲で、大丈夫だよ、本当の君を隠さなくっていいんだよ。 あなたのカラーは本当に素敵、綺麗な虹のようにの歌詞のMessageに感銘をうけ、そこから自分らしいジュエルボックスみたいなCDにしたくて、恋に落ちた大好きな曲16曲を、ミュージシャン総勢17名と録音。

3枚目のNostalgiaは2005年から始めたツアーが、去年の2015年で10周年を迎えることができたので、その10年の間の出逢いと別れ、思い出、切ない想いを1枚のCDに残したかったので作りました。その際、この記念アルバムは応援してくださる方達とともに創りたいという想いから、クラウドファンディングで作らせて頂きました。

 

  • 選曲やそれにまつわるエピソードなど、教えてください。

大 好きなMONDAY満ちるさんの自宅に招いて頂いた際に、MONDAYさんがファンでジャズを始めましたとお伝えして、1枚目のアルバム”OBSESSION” をお渡ししました。

MONDAYさんは、OBSESSIONの中のミルトンナシメントのBRIDGESを凄く気に入ってくださり、彼女の次のCDにその曲が録音されました。その彼女のレコーディングにアコーディオンで参加していた、ギル・ゴールルドスタインに音惚れして、HP から熱烈にアプローチしましたが、しばらく返事は来ませんでした。

ギターのホメロに連絡をいれてもらいましたが、不在。更にしばらくしてやっとHPから連絡を頂き、夢の共演。とてもフレンドリーで、 エリカの事を前から知っているかのようだと上機嫌で、アコーディオンにプラスピアノまでサービスで弾いて下さいました。あのドリームバンドでのセッションは今でも鮮明に記憶に残っています。アレンジなしでの一発録り – ホメロのイントロから始まり、お互いの音、呼吸を感じ取りながらインタープレイで奏でられた音に包まれ、極上の幸せの中、歌い終わった時 は涙溢れました。

 

  • アレンジやその他の準備はどのように行いましたか?

通常アレンジはああでもないこうでもないと、何ヶ月も前から煮詰めていくのですが、今回のツアー10周年記念アルバム”NOSTALGIA”に収録されている春の切なさを歌ったオリジナルHANAMIZUKIは、キューバ人のYOSVANY TERRYがアレンジしてくれました。歌詞とハナミズキの写真と、音源、譜面をおくり、切ない感じでというリクエストにも関わらず、ヨスバニーは凄いアグレッシブなイントロをつけてく れたので、私の思い描いていたイメージと正反対のアレンジに初めは戸惑いました。

し かし、アレンジが出来たのがレコーディングの2日前。お直しの修正をやりとりする時間もなく、そのままの状態でレコーディング。NYライフも予想着かない 事が毎日起きて、それに対して反復横跳び精神で乗り切らないとサバイブできない。その即興性を求められるライフスタイルをベースに、今回このアレンジも一 期一会だということで、アグレッシブでキューバンテーストを含んだアレンジに、切ないあなたを思いながらハナミズキ〜という柔らかい歌詞を一転させて、厳しい都会を生き抜く女性の歌に変えました。

 

  • レコーディングの環境はどのように決めましたか?
  1. エンジニアがいいところ
  2. 音漏れがしないようにアイソレーションがきちんとされているか
  3. ピアノの音がいいかどうか
  4. いいマイクがあるか
  5. 音質
  6. 機材

 

  • アートワークについても教えてください。

最初の作品製作以降、10年以上お世話になっているトライゴングラフィックさんに3枚のアルバム、そしてフライヤーをお願いしています。

そして、イラストはいつも私の大好きなイラストレーター橘春香さんに依頼させて頂いています。

 

  • もっとも心を砕いた部分は?

自分らしいOne And Onlyのオリジナリティー。

 

  • その他楽しいレコーディング秘話があれば教えてください。

リハーサル、レコーディング、ライブもいつも気の会う仲間と時間を共にしているので、常に笑いが絶えません。

ベースのエシエットエシエット、面白すぎて。

色々な方々と出会い、支えてもらい、自分は本当に恵まれているとつくづく思います。この3枚のCDを作るごとに、成長させてもらい、その音楽活動で築いた信頼関係、愛情に本当に感謝しています。

 

 

  • 最後に、ジャズファンのみなさん、他のシンガー・ボーカリストのみなさん、またはJVAJの活動へのメッセージをお願いします。

 

JVAJの活動、なかなか聞けないボーカリストの方々のお話をきけてとてもためになります。

今回参加させて頂いた事、ご縁に心から感謝いたします。