Pass the Baton! 008は東京より
丸山繁雄さんのインタビューをお届けいたします!
プロフィール
SHIGEO MARUYAMA
丸山繁雄/ Shigeo Maruyama
1951年新潟県高田市(現上越市)生まれ。
早稲田大学モダンジャズ研究会にてボーカルインプロビゼーションを始める。
1981年デビュー・アルバム「A Young Father’s Song」発表。以来、内外の名プレイヤーと共演。7作のリーダー・アルバムと数多くの著作を残す。
恩師Jon Hendricks をして「The most valuable singer」と言わしめた驚異的な歌唱力に加え、作・編曲にも優れ、ドラム+ボーカルのデュオから、21人編成のビッグ・バンドまで、広範な楽域にわたるリーダー・バンド活動を続ける。
1990年、91年、スイングジャーナル誌批評家投票第一位。2001年には、日本人ボーカリストとして史上初めて、アメリカの名門Verveレーベルに所属。「The Vintage Songbook」発表。
2006年にはジャズの歴史書「ジャズ・マンとその時代」(弘文堂)上梓。現在第3版を数える。1987年より日本大学芸術学部音楽学科講師。研究・教育活動も28年に渉る。
2011年6月、学位論文「アフリカン・アメリカン音楽の言語同化現象」完成。同年11月28日、日本大学より日本人ジャズ演奏家として史上初の博士号(芸術学)授与。
2013年にはJon Hendricksとの念願の共演・日本ツアーを敢行。「Shigeo!! He’s the one!! シゲオ!!彼こそ本物!!」とJon Hendricksより絶賛を受ける。2016年1月、このツアーを収録したライブ・レコーディング・アルバム「Shigeo Maruyama SUIKYOZA meets Jon Hendricks The ONE」(F.S.L)発表。各界で大反響を呼んでいる。
丸山繁雄ボーカル・スクールは30年の歴史を重ね、池袋、銀座、渋谷、赤坂、名古屋、佐賀と全国に教室展開し、多くの後進、逸材を輩出している。
ディスコグラフィ
(画像をクリックしていただくとAmazon.co.jpストアをご覧いただけます)
A Young Father’s Song
アケタズ・ディスク(1981)
The Vintage Songbook
Verve/Universal (2001)
The ONE / Shigeo Maruyama SUIKYOZA meets Jon Hendricks
F.S.L. (2016)
その他の作品はこちらのページでご覧ください。
http://shigeo-maruyama.com/cdbook/
丸山繁雄 インタビュー
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どのようにジャズを歌う勉強を重ねてきましたか?
1970年、いわゆる「70年安保」の年に早稲田に入学し「早稲田大学モダンジャズ研究会」という学生サークルに入ったことが人生を決定づけました。
ボーカルは私独りで周りは全員楽器のインプロヴァイザーです。セッションに入れてもらうためにはスキャットで説得力のあるアドリブを身につけなければなりません。
「器楽に伴奏されるボーカルではなく、器楽とともに音楽をやるボーカリスト」というプライドは、そんな環境から自然に身につきました。
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もっとも尊敬するアーティスト、お気に入りの作品は?
確か75年あたりだと思いますが「Jon Hendricks Recorded In Person At The Trident」というアルバムに巡り会ったことが、さらに私の音楽人生を決定づけました。
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ロールモデルにしているエデュケーターやメンターは誰ですか?
ボーカリーズという範疇のみにとどまらない、ジョンの歌手としての存在の深さ、大きさに心打たれました。以来40年以上、ひたすらジョン・ヘンドリックスの背中を追い続けた音楽人生でした。
2013年春、91歳のジョンと国内3カ所のツアーを行うことができたこと、2016年、そのツアーのライブ・アルバム「Shigeo Maruyama SUIKYOZA Meets Jon Hendricks The ONE」を発売できたことは、生涯の夢が一つ叶ったという思いです。
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エデュケーターとして教え始めたきっかけは?
1987年日本大学芸術学部からの要請で「ジャズ概論」「インプロビゼーション」の講座を担当。現在に至ります。
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自分のレッスンの良さや、ユニークな点はどんなところだと思いますか?
2011年11月学位論文「アフリカン・アメリカン音楽の英語同化現象=The Language Assimilation Phenomenon Of African American Music」にて日本大学より博士号(芸術学)を授与。ジャズ研究での博士号、また現役ジャズ・マンの博士号取得も日本では前例がないもので、私個人の名誉よりもジャズ研究が学問として公的に認知されたことに、より歴史的な意義と喜びを感じております。
研究内容は、いわば「言語リズムと音楽リズムとの相関」の認知と、それを前提とした学習法の確立で、20代から研究開発してきた指導法の軸となっています。この指導法は「丸山メソッド」として現在もほぼ毎日、丸山教室の指導の中軸となっております。
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製作について
これまで、「A Young Father’s Song」(アケタズ・ディスク)「YuYu」(花工房)「プナカへの道」(花工房)「Sweet Lorraine」(クラウン・Break Time)「Kick Off」(キング)「The Vintage Songbook」(Universal/Verve)「Shigeo Maruyama SUIKYOZA Meets Jon Hendricks The ONE」(FSL)をリリース。
デビュー・アルバムからの三作「A Young Father’s Song」「YuYu」「プナカへの道」は、オリジナル(作詞・作曲・編曲)中心でスキャットのアドリブが中心になっています。青春の音楽です。
第四作「Sweet Lorraine」は初めてのニューヨーク録音。Norman Simmons, Lysle Atkinson, Kenny Washington のトリオで、緊張と気合いが伝わってきます。
第五作「Kick Off」は13年間リーダーとして月例のライブを続けた「丸山繁雄酔狂座オーケストラ」が「ヤマハ・ジャズ・フェスティヴァル」に出演したコンサート録音です。「ラグビー組曲」など、作・編曲にも夢中になっていた頃の作品です。
第六作「The Vintage Songbook」は、現在の「酔狂座」の中核がほぼそろった頃のライブ録音です。ギター・ベース・デュオによるものから六管編成まで、様々な編成での演奏が含まれていますが、編曲はほぼすべて丸山がやりました。
なおこの作品は、日本人ボーカリストとして、「Verve」 レーベル所属第一号となったものです。
第七作の「Shigeo Maruyama SUIKYOZA Meets Jon Hendricks The ONE」は前項で述べたとおり、巨匠ジョン・ヘンドリックスとの共演です。
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最後に、ジャズファンのみなさん、他のシンガー・ボーカリストのみなさん、またはJVAJの活動へのメッセージをお願いします。
ジャズは私の命を救い、人生を導いてくれました。今となってはもう、ジャズ抜きの人生は考えることもできませんが、もう一度同じ人生を歩むことができるかと問われたら、それは分かりません。それほど、音楽の喜びも大きかったのですが、苦闘の時期も長く、辛いものでした。
演奏家をあきらめた友人も数多く、中には自ら命を絶ったものもいました。しかし、他の道を選んだらより安易な人生だったかどうかは、これも私には分かりません。自分で選んだ、一回だけの人生しか、私たちは経験できないからです。
でも、これだけは言えます。アメリカが生んだ、真にアメリカのオリジナルといえる音楽文化は、ジャズやR&Bなど、「アフリカン・アメリカン音楽」だけなのです。そしてジャズは、世界中の音楽に影響を与え続け、世界中の人々を今でも魅了し続けて言います。それはなぜか。
私たち人類はおよそ700万年前にアフリカの大地に誕生し、私たち現生人類(ホモ・サピエンス)がアフリカを出て世界に拡散し始めたのはわずか6万年前に過ぎません。すなわち人類史の99パーセント以上はアフリカが舞台なのです。言い換えれば、私たちは99パーセント「アフリカ人」なのです。
アフリカの音楽要素、ことにそのスイングするリズムの魅力は、現在のアフリカ大陸に住む人々のみならず、私たち「アフリカ人」の、共通の音楽本能に根ざすものなのです。ジャズが世界音楽であるのには、ちゃんと根拠があります。