Pass the Baton!【011】平賀 マリカ (MARICA HIRAGA)

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Pass the Baton! 011は東京より
平賀マリカさんのインタビューをお届けいたします!

プロフィール

MARICA HIRAGA

Marika Hiraga

Marica Hiraga

平賀マリカ /  Marica Hiraga

華やかなエンターティメント性と確かな歌唱力でジャズシーンをリードする実力派ボーカリスト。

駒沢大学文学部英米文学科在学中にマーサ三宅に師事。国内でのボイストレーニングを伊藤君子に師事。

OL時代に香港で開催されたアジア音楽祭にて金賞を受賞後、プロ入り。
2001年にインディーズから「My shining hour」を発表後、ニューヨークにてボイストレーニングやセッション等で研鑽を積み、06年に発表したエリック.アレキサンダー&ハロルド.メイバーントリオとの共演盤「Faith」でブレイクすると、その後ニューヨーク録音による意欲的なアルバムを次々と発表。

マンハッタンジャズクインテットと共演した「クローストゥバカラック」(07年)、マイケル.フランクス、マルコス.ヴァリと共演したボサノバ特集「バトゥカーダ」(08年)、カーペンターズの名曲集「シング ワンス モア」(09年)がスイングジャーナル誌のジャズディスク大賞ボーカル賞を3年連続受賞という史上初の快挙を達成。また、初のビックバンド共演作品「Sings with the Duke Ellington Orchestra 」(12年)では米国の名門オーケストラとの共演、と話題になった。

海外での活躍としては、台北ジャズフェスティバル、又、ロシア、サンクトペテルブルクにて行われた、日露文化交流コンサートに参加。

また、ジャズ界のみならず、東京フィルハーモニー交響楽団と共に新国立劇場にて、現代音楽によるバレエ「ペンギンカフェ」のバレエ音楽を歌うなどクラシック界でも活躍、また、Jpop界のシンガーソングライター大澤誉志幸とは、大学時代の盟友の縁で、時々コラボライブに参加している。

現在、ライブ、コンサート、ディナーショーなどに出演しながら、後進の指導も行っている。

2015年4月8日にリリースされた新作「マンデルシーニ」は、米映画音楽の2大巨匠とも言われる作曲家、ヘンリー.マンシーニとジョニー.マンデルを特集した。

ディスコグラフィ

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Faith
P-JAZZ(2006)
Faith

My Shining Hour
P-JAZZ(2007)
マイ・シャイニング・アワー

Batucada ~Jazz’n Bossa~
P-JAZZ(2008)
Batucada~Jazz’n Bossa~

More Romance
SPACESHOWER MUSIC SPACESHOWER NETWORKS INC. (2008)
モア・ロマンス

 

Sing Once More ~Dear Carpenters~
SPACESHOWER MUSIC SPACESHOWER NETWORKS INC. (2009)
Sing Once More~Dear Carpenters~

Mona Lisa  ~Tribute to Nat King Cole~
SPACESHOWER MUSIC SPACESHOWER NETWORKS INC. (2011)
モナ・リサ~トリビュート・トゥ・ナット・キング・コール~

Emotion Live at STB139
オフィスエム・ツー(2013)
Emotion Live at STB139 [DVD]

Sings With The Duke Ellington Orchestra
SPACESHOWER MUSIC SPACESHOWER NETWORKS INC. (2012)
Sings With The Duke Ellington Orchestra

Close to Bacharach Special Edition
SPACESHOWER MUSIC SPACESHOWER NETWORKS INC. (2015)
Close to Bacharach Special Edition

Mandelcini
SPACESHOWER MUSIC SPACESHOWER NETWORKS INC. (2015)
Mandelcini

 

平賀マリカ  インタビュー

 

  • ジャズを歌い始めたきっかけは何ですか?

 

大学時代に入っていたサークルでは主にニューミュージックやフォークソングを歌っていましたが、

英語の勉強にもなるから、とカーペンターズを聴くようになりました。そのうちにバンド活動をするようになり、ブラックコンテンポラリーをコピーするようになり、スティービー.ワンダー、エモーションズ、チャカ.カーン等を歌っていました。その中で、マリーナ.ショウの「Who is this bitch anyway?」の中の「Street walking woman 」を聴いて、16ビートと4ビートが交互に出てくる、この4ビートに衝撃を受け、スイングする楽しさを表現したい、とエラ.フィッツジェラルドを聴くようになりました。

そのうちにジャズボーカルを本格的に勉強したい、と思い、マーサ三宅さんの主宰するボーカル教室に入りました。

 

  • これまでの活動で苦労したことやその解決策を教えてください。

 

デビュー当時は阿川泰子さんが第一人者として大活躍されていて、物凄いジャズボーカルブームでした。

大学卒業後、OLとの2足の草鞋を履いての活動をしていても、幸運にも歌う仕事には恵まれていました。当時はライブハウスのオーナーやマネージャーがバックのミュージシャンをブッキングする、ということがよくありました。でも、ライブ中にミュージシャンとの音楽的距離を感じることが時々ありました。なんか、アウェイな感じと言うのですか、インストの時は盛り上がるけれど、ヴォーカルが出てくると、冷めたバッキング、どうでもいいようなバッキングをするようなミュージシャンもいて。

ジャズという音楽は、自分だけが楽しいだけでは成り立たない音楽なんだ、あくまで合奏なんだ、と認識して、ヴォーカリストもミュージシャンの一員として参加できるように、スキルアップのため地道にいろんな勉強をしました。私の場合は、国内、又はニューヨークでのボイストレーニング、英語発音の見直し、スイング感を養う事、が特に役に立ちました。

ボーカルを楽器として認識してもらう為には、まず出音(でおと)として体からいい声がでないと、と思いました。

また、どんなに有名で上手いミュージシャンとライブをしても、歌が好きでないミュージシャンとは安易にコラボしてはお互いが不幸、と気付き、やはり、歌が好きな方に共演をお願いする、と心がけています。ボーカルは感情の楽器ですからね。

現在はボーカルブームも去り、ジャズファンも少なくなりつつあり、どこも集客が難しいですね。

アマチュアシンガーを入れると集客できるので、どこもそんな状況に追いやられ、本当のジャズファンがクラブ離れしているようにも感じます。

アマチュアとプロが共存共栄できる環境が理想だとは思いますが、大きな課題だと思います。

 

  • どのようにジャズを歌う勉強を重ねてきましたか?

新曲を覚えるときは、音源は一度くらいしか聴きません。全体的な雰囲気がわかったら譜面からメロディを細かいところまで練習します。そうしないと、誰かのコピーになってしまい、自分の個性が確立できませんので。

作曲家が命削って作った先品ですから、敬意を表して歌わせて頂くので、まずはとことんオリジナルメロディを歌います。歌詞を載せてきたら、次は会話するようにセンテンスを区切って、話すように歌ってみる。と、歌詞が生きてきますし、ビートにのってきます。

自分が心から歌っているように表現するには、じっくり時間をかけて歌って熟成させることが大事だと思います。

 

  • ジャズを歌うことのどんなところが好きですか?

 

自分の人生では経験できない物語を音楽に乗せて表現できる事。女優さんもきっとこんな気持ちなのでは、と思います。いろんな人になったり、まるで自分と同じだな、と感じたり、人生の非日常を味わえます。

それと、ミュージシャンとクリエイティブでいいサウンドを共有できたり、オーディエンスの拍手や笑顔に出会える、そんな瞬間が大好きです。

 

  • もっとも尊敬するアーティストは?

 

もちろん、エラ・フィッツジェラルドです。

最近のシンガーではダイアナ・クラール、マイケル・ブーブレ

作品は

エラ・フィッツジェラルド 「 Ella in Berlin 」「Take love easy 」
エラ・イン・ベルリン完全版(+4) Take Love Easy

アニタ・オディ「This is Anita」
ジス・イズ・アニタ

マリーナ・ショウ「Who is this bitch anyway?」
フー・イズ・ジス・ビッチ・エニウェイ

 

  • 健康管理のために日頃、どのようなことに気をつけていますか?

 

よく寝ます。好きなものを食べます。好きでない人と無理矢理付き合うのが苦手です。

ボーカリストにはストレスが本当に声によくない、と思いますが、仕事をする事はストレスもつきものなのでオフの日はなるべく、仲の良い人と美味しいものを食べて、他愛のない会話で笑顔になる、という時間を大事にしています。自然に声や体も調子よくなります。

 

  • アーティストとして将来の目標や今後の抱負などお聞かせください。

 

今はフリーになりましたが、事務所にいた時にはニューヨーク録音など、随分やりたい事をやらせて頂いて、思い残すところあまり無いのですが、私の歌を聴いてくれて喜んで下さる方がいれば、日本全国もちろん海外も、どんどん歌いに行きたいなあ、と思っています。

いい声の状態をキープしながら、ジャズに限らずいい歌が歌えて、人の心に寄り添えたらと願っています。

今後、後進の指導としましては、今までライブで培った事、共演したミュージシャンからの助言、ニューヨークでのレコーディングで勉強になった事、師事した先生方から心に響いた事、自分自身が音楽生活の中でこれがあったから歌ってこられた、という事を余すところなく伝えていけたら、と思っております。

 

  • ロールモデルにしているエデュケーターやメンターは誰ですか?

 

先輩ボーカリストの伊藤君子さん。

一度壁にぶつかって、スランプでどうにもひどい時に、精神的に救って頂き、ニューヨークでのボイストレーナーもご紹介頂きました。1人で向こうへ行き、とても元気になって帰ってきた事を思い出します。

また、高齢になられても現役でいい声をキープされているマーサ三宅さんを尊敬しています。

当初、家族にはヴォーカリストになる事を大反対されましたが、今は応援してくれている家族。といっても両親が亡くなったので、兄達ですが。

そして、私の仕事の良きところ大変な事も理解してくれる友人達です。

 

  • 最後に、ジャズファンのみなさん、他のシンガー・ボーカリストのみなさん、またはJVAJの活動へのメッセージをお願いします。

 

日本国内ではジャズはアメリカ人が歌うから本物で、日本人が歌うのは偽物、と思っているジャズファンが多いのに驚きます。確かにニューヨークに行くと、楽器奏者のレベルは国籍関係なく邦人が有名なバンドにピックアップされるという現状を目の当たりにしました。

ヴォーカリストは、歌詞が英語、要するに母国語でない分、高い壁がありますね。

アメリカ人にはなれませんが、日本人特有の繊細な感性、また、MCではわかりやすい歌の説明とか、私たち日本人にしか表現できない事もあると思います。それでも、発音に関しては少しでもネイティブに近寄りたいですが。

外人アーティストのブッキングが多いクラブに行くと、本当にオーディエンスは楽しんでいるのか、外人だから気分がその気になって高額なチャージを落としているのでは、と思う事もあります。

私たちも常に国際レベルにまで到達できるよう日々努力をしなければいけないと思いますが、ジャズファンも国籍にこだわらず、好みのシンガーを見つけて応援して頂きたい、と思っております。

JVAJで邦人のヴォーカリストに光を当ててくださることは、本当に有難いことです。

今後とも是非とも私達を応援して頂ければと思います。