Pass the Baton! 002は米国マイアミより
森川奈菜美さんのインタビューをお届けいたします。
プロフィール
NANAMI MORIKAWA
森川奈菜美
大阪生まれ。3歳の頃よりヴァイオリンを習い、10歳より守口市少年少女合唱団に所属し、子供の頃から音楽に親しむ。
2002年 神戸山手女子短期大学 音楽科 音楽デザイン専攻科(旧名 作曲科) 卒業。
2003年 ジャズヴォーカル活動を開始。
2008年 第28回 東京 浅草ジャズコンテスト Vocal 部門において、全日本グランプリ(第一位)を受賞。
2010年、ファーストアルバム”Open Spaces”をNew Truth Recordsより、フィリップ・ストレンジ・トリオとの共演でリリース。
同年7月、ドクター・ジェイミー・オウズリー のアルバム “A Sea of Voices”(T.I.E. Record)に、フィーチャードアーティストとして参加、録音。
2012年、アメリカ・フロリダ州に拠点を移し、日本だけでなくアメリカ各地にエリアを広げ、ライブ活動を繰り広げている。現在はマイアミ大学の学士課程でスタジオ・ミュージックとジャズボーカル・パフォーマンスに在籍。
内容は、主に、ジャズインプロヴィゼーション、ジャズヒストリー、ジャズアレンジ、ジャズ理論とジャズピアノ、一般教養(英語、ポエム、数学、ビジネスなど他)ジャズボーカルアンサンブル、ジャズコンボアンサンブル、パーカッションテクニック、声楽、発声個人レッスン、指揮、音楽学、新曲視唱、ジャズ作曲、音楽ビジネス、音楽テクノロジースキル。
大学でマスタークラスを受けパフォーマンスも聴いた先生は、ゴンザロ・ルバルカバ(p)、フレッド・ハーシュ(p)ケニー・バロン(p)テレンス・ブランチャード(tp)、クリスチャン・マクブライド(b)、ヴィンス・メンドーサ(arr)、マリア・シュナイダー(arr)、ダフニス・プリエト(ds)カーリン・アリソン(vo)、ブランフォード・マルサリス(sax)、エルダー(p)、シェリル・ベンティーン(vo)グレッチェン・パーラート(vo)シリル・エイミー(vo)、など他多数。学んだ先生は、ケイト・リード(vo)ギャリー・ケラー(sax)、ギャリー・リンジー(sax,arr)、チャック・バジョロン(b)、ダンテ・ルチアーニ(tb)、ジョン・ハート(gt)、レイチェル・レボン(vo)、ダニエル・ストレンジ(p)ケビン・マホガニー(vo)ギャリー・ダイアル(p)ジャネット・ローソン(vo)シーラ・ジョーダン(vo)ヴィンス・マジオ(p)ウェンディ・ピーターセン(vo)(他多数)。
Recognized as one of Japan’s leading emerging jazz vocalists, Nanami Morikawa won the prestigious Grand-Prix at the Asakusa Jazz Competition in Tokyo (2008), and has been a featured artist at major Japanese jazz festivals. She is highly popular with jazz audiences and appears regularly at all major jazz clubs in western Japan.
Nanami Morikawa recorded her critically acclaimed solo CD in 2010— Open Spaces (New Truth Records). The CD features international jazz pianist Phillip Strange, Larry Marshall (drums), and Tetsuro Aratama (bass). She has also been a featured artist on several international recordings including: vibraphonist/composer Toshihiro Akamatsu’s album Axis, Florida bassist Jamie Ousley’s albums Back Home (T.I.E. Records) and A Sea of Voices (T.I.E. Records).
Born in Osaka, Japan, Nanami Morikawa has a solid and multifaceted foundation of musical experience in support of her vocal artistry. She began music at age 3 by taking violin lessons and later joined a city children’s choir at age 10, influenced by her musical mother, who loves singing and playing violin and piano. In 2002, Nanami received her A.A. degree in classical composition from Kobe Yamate College. Later, she became interested in singing jazz when she met her first jazz voice teacher, Yuko Aoki. Over the next 10 years, Nanami studied jazz piano and jazz voice with several teachers while she was performing regularly with popular jazz musicians throughout western Japan. Now she teaches private jazz voice lessons while touring in Japan. Recently, her performing areas have extended to Tokyo, Yokohama, and throughout the United States.
Nanami moved to Miami, Florida in 2012. Currently she is pursuing a B.M. degree in Studio Music and Jazz Vocal Performance at the University of Miami. She continues to tour the U.S. and Japan annually.
ディスコグラフィ
OPEN SPACES 森川奈菜美 & Phillip Strange Trio
New Truth Records 2010
(画像をクリックしていただくとAmazon.co.jpストアをご覧いただけます)
インタビュー
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ジャズを歌い始めたきっかけは何ですか?
短大時代に、ピアノ科の友達がジャズに興味があってライブに誘ってくれ、その時にジャズの存在を初めて意識をしました。
卒業後、ジャズライブを聴いていて、どうしたら自分もジャズが歌えるようになるのかなと思い、惹かれ始めました。
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どのようにジャズを歌う勉強を重ねてきましたか?
最初の頃はボイスレッスンに通ったり、バイト先のジャズバーで歌わせてもらったりして、ゆっくり慣れていきました。
ここ最近の十年は、アメリカでの経験が大きく影響をしていますが、それに限らず、常に意識を向けているところは、出会ったいろいろな人の意見を聞いて理解を深めていくこと、現地の音楽関係の仕事の人やプロのミュージシャンと関わって身近に慣れること。
ライブ現場で沢山パフォーマンス経験、いい共演を重ねること、いろいろなアーティストのCDを聞いて探求してみたり、興味があるアレンジはトランスクライブしたりしてます。
自分の声を録音して、いろいろなレコーディングと聴き比べて研究してみたり、実験的に色々な声を試してみて、遊んでます。
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ジャズを歌うことのどんなところが好きですか?
自然発生的なやりとりや即興演奏の可能性と自由さ。
生身の人間の個性や感性が滲みでるところ。
人間らしさや何かを表現出来るいろいろな可能性があるところ。
作曲や編曲して歌えるところ。
歌詞の世界観をカタチにとらわれずに自由に表現できる可能性が好き。
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健康管理のために日頃、どのようなことを意識していますか?
睡眠!!!水分を取る、リラックス、太陽を浴びる、ウォーキング、お風呂。
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好んで聴くアーティストは?
シャーリー・ホーン、カーメン・マクレエ、サラ・ヴォーン、マイルス・デイヴィス、チェット・ベイカー、ボビー・マクファーリン、ロサ・パソス、アントニオ・カルロスジョビン、ニーナ・シモン、キース・ジャレット、ダイアン・リーヴス、ベティ・カーター、ビリー・ストレイホーン、ウェイン・ショーター、ボボ・ステンセン、ブラッド・メルドーなど。(他多数)
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生徒さんを教えていて最も幸せを感じるのはどんなときですか?
生徒さんの役に立てて、喜んでもらえた時。
新しい視点を持って広がった時、アハ!の瞬間。
楽しい、やる気が出た、と感じてもらえた時。
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CD製作に関してのご経験をシェアしていただけますか?
アルバム名: Open Spaces
メンバー: フィリップ・ストレンジ(p)荒玉哲朗(b)ラリー・マーシャル(ds)
エンジニア: 春日峰夫さん
アレンジはフィリップさんです。
レコーディングの環境は新大阪のココプラザ。
アートワークはフィリップさんがお友達を紹介してくださりデザインをお願いしました。
レコーディングの編集作業の中で、春日さんとフィリップさんと作品を仕上げていく中で、編集作業の過程のアイデア交換がとても楽しかったのを覚えています。
初めて製作したCD、クオリティも高く、本当に貴重な経験をさせてもらいました。心から感謝しています。
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マイアミ大学の印象と経験について教えてください。
ジャズ専門に特化したプログラムに入りました。若い生徒さん一人一人のレベルがとても高くて、若くて才能のあるミュージシャンたちの意識と学ぶ姿勢のあり方にとても驚きました。
ジャズのクラスでは意見をシェアしたりとても早いスピードの会話でコミュニケーションをとりながら、先生と生徒が音楽に取り組みます。
ジャズボーカルプログラムのクラスメートは皆アメリカ育ちか、たまにヨーロッパからの交換留学生ぐらいで、たった一人の日本人、渡米して間もない私は、英語力も拙く、文化に合わせた喋り方や、振る舞い方などを、初めは上手く表現できずに、年齢も離れている同級生たちともどう関わっていいかわからずなかなか馴染めずにいました。
何事も簡単にはいきませんが、言えることは、英語で繊細にやりとりする能力はとても大切です。そして、授業でわからないことは、たとえ超シンプルなものでもうまく言えなくても、とにかくたくさん質問(声をかける)した方がいいです。
日本の大学と違い、自分一人で家で宿題を頑張っても、頑張りは伝わらないし、先生には興味がないのかと誤解されます。自己完結せずに、英会話に自信がなくてもとにかく声にしてなんでも訪ね続けることの大切さを学びました。
あと、毎月のように世界からトップクラスのミュージシャンたちがマイアミ大学に来てマスタークラスやパフォーマンスを身近に聞いたり、彼らの考え方や生徒さんたちの質問に答えるのを聞いていて、視野が広がり楽しかったです。
他にも沢山、大学生活の全てをここではとても書ききれませんが、マイアミ大学では、毎日いろんなタイプの先生からの学び方を経験し、様々な角度からジャズの勉強をできて、本当に感謝しています。
- これまでの活動で苦労したことと解決策は何ですか?
ライブの経験と勉強のバランスです。
日本にいた時はライブ経験がほとんどで理想とするほどには音楽の詳細を掘り下げるプロセスを十分に持っていませんでした。逆に、理論や知識は、知っていて口では説明できても、実際自分が経験したことがないと本当の意味での自信が持てません。
私は、社会の中で人との摩擦を避けるために自分の意見を封じ込めて、自分が本当にしたいことと、人の価値観との間で、どうしたいかがわからなくなった時期がありました。
20代の頃は、偏見がなく真っ白なキャンバスで右も左もわからない時期は、何を指標にしていいかわからないですが、とにかくで目の前のきることから始めます。
価値観を構築していく上で、誰もが知らず知らずのうちに得た考え方に偏ってしまうことがあると思います。でも遠回りしてから後になって、一つのアドバイスの深さに気がつくこともあります。
個人同士が経験を残しシェアしていく中で音楽の存在が受け継がれていくのだと思います。
私の解決策としては、物事の表面だけにこだわらず、自分のやりたいことと外部情報とを照らし合わせながら、いろいろな人の考え方や視点に触れることが大切だと思います。
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これからの目標は何ですか?
今後は作曲をし、さらにピアノのスキル、英語の表現力を磨いて、情景が浮かぶような自分音楽の世界観の創造、そして心の深いところにある歌う喜びを大切にしていきたいです。
死ぬまで学び続けて成長し続けていたいです。
それと、私のように成人してからジャズをやり始めて成長の想いを秘めている人たちにも、これまで学んできた勉強やあらゆる現場で培ってきた体験を生かして個々の音楽を育てられる情報を提供していきたいです。
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最後に、ジャズファンのみなさん、他のシンガー・ボーカリストのみなさん、またはJVAJの活動へのメッセージをお願いします。
日本とアメリカがより近く感じられるようになる、素晴らしい活動だと思います。
今後、海外の現地で活動していける日本人アーティストがもっと増えていけるような気がします。
これからも、どんどん交流を広げてください。